実は私は平安文学の大ファンであります。
昨年の大河ドラマ「光る君へ」が終わってしまって、なんだか落ち着かない心持ちでして……。
大河ドラマお得意の戦国期時代を飛び越えてからの江戸文化が花開いた物語。
今年の大河ドラマは江戸時代が舞台だ。
昨年も言われましたが、合戦のない物語って楽しいのかってね。
確かに平安時代だから合戦はなかったですが、
陰謀と裏切りが渦巻く時代だったようです。
今回も合戦はないと思われます。
江戸時代を扱った物語は、それこそ現代物と遜色がないほど
多くあります。小説となると、私は山本一力さんとか朝井まかてさんの
小説が大好きだ。あとは畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズも
江戸ものと呼べないこともない。
さて、私も下手くそながら超短編ながら小説を書いたことがある。
まずは大好きな平安ものとはいかず。なにしろ登場人物に
台詞を喋らせることもできない。
「光る君へ」では父親のことを「父上」と呼んでいたが、
はたしてそれは平安時代の正しい言葉だったのかと思うと
まったく書くことができなくなってしまったのだ。
江戸時代ものならば、しかも舞台が江戸の街中なら、
水戸黄門や大岡越前の時代劇の知識は少しはあるので、なんとか書けるかもと思った。
江戸らしさを出す小道具に、地名の羅列だったり、
大きい川にかかる橋のたもとにある火の見櫓などを登場させると「江戸」っぽくなる。
町人の暮らしに欠かせない食べ物で「蕎麦」がある。
物語に登場させると、途端にそれっぽく見えるから不思議だ。
|
「おい、おめえ、定吉だろ。俺だよ、俺」
「おう、珍しいじゃねぇか、三郎か」
三郎は通りを目的もなくぶらついていた。
魚屋のぼてふりが、商いを終えたのか、急いで帰っていく。
せっかちな江戸っ子の若い衆は、梅雨明けもしていない街を
「いい日和じゃねえか」と笑いを誘いながら歩いていた。
こんな時は不思議なもので、幼なじみの二人が江戸の街中でばったり会ったりするものだ。
「五年ぶりくれえか、最後に会ったのは親父の葬式だな」
「それからどうしてた、元気か? おめえ、女房も貰わずに大工の仕事を続けてるっていうじゃねぇか」
三郎の仕事は大工だ。
ここのところ雨ばかりで実入りは少ないので、街でばったり会った幼なじみに
酒でも奢らせようと声をかけたのだ。
「まさかおめえとこんなところで会うとは思わねえじゃねぇか。どうだい、一杯そこで」
そう言って近くの蕎麦屋を指さした。
うなぎ屋の煙に心が引かれたが、うなぎは土用の丑の日まで我慢が肝心、と。
この時代でも、昼間から酒を飲むなとは言われないが、それなりに後ろめたいものである。
こういうときは、蕎麦屋で飲むぶんには誰に遠慮もいらねえ。
江戸時代の酒飲みは、昼間から蕎麦屋で酒を飲むのが粋なのである。
↓蕎麦を食うなら蕎麦猪口にもこだわるのが江戸っ子
|
まあこんな感じで江戸時代の町人の物語が始まる。
初回を見る限り「べらぼう」は吉原遊郭を舞台にするのかな?
普通の勧善懲悪時代劇とはひと味違うドラマが楽しみである。
|